東熱技術研究開発センターについて
本センターは、当社の新たな技術開発の中核拠点として、また未来に向けた挑戦の象徴として整備しました。研究開発部門(技術研究所)と製造部門(エアトロニック事業部)を集約し、産学連携スペースを併設することで、研究・製造の両面におけるイノベーションを加速させることを目指しています。
本センターのワークプレイスコンセプト
本センターでは、これまで別々の建屋で活動していた2部署が一つの建屋に集約され、部署間の連携や他部門・来訪者との交流を促進する新たなワークプレイスが求められました。
施設はスキップフロア型の立体構成を採用し、1階のエントランスから3階のラウンジまでを連続した空間として“立体的な環境場”を設計。上下階の視線の抜けや自然光・風の取り込みにより、交流・自然・技術が融合する場を創出しています。
環境計画では、空間に生じる自然な温度差を価値創造のきっかけと捉え、熱環境に適応したオフィス機能を配置。開発者が“熱を感じる空間”を体験することで、新たな開発の着想を得ることを目指しています。
また、自己裁量性の高い働き方に対応するため、ABW(Activity Based Working)を導入。活動に応じて快適な場所を選べることで、働きがいと生産性の向上を図っています。
ワークプレイスコンセプト
外観パース
「熱を操る空調」の実現
本センターは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた社会的要請に応えるべく、自然エネルギーを活用した「熱を操る空調」の実証・研究施設として位置付けています。
太陽由来の自然エネルギーの活用に着目すると、最終的に空調に必要な「熱」として活用することを考えれば、限られた都市空間において最大限の効率を追求するには、太陽電池よりもエネルギー効率が高い太陽集熱技術を導入することが有利となります。しかし、空調需要と太陽エネルギー供給のタイミングが一致しないという課題があり、エネルギーロスの最小化が重要な研究テーマとなっています。
本センターでは、当社がこれまで培ってきた熱源最適化技術「E-SCAT」をさらに進化させ、AIによる予測技術とビル内で収集可能な多様な情報を活用することで(AI-SCAT)、スマートビル化を推進しています。これにより、熱源の最適化に加え、建物全体の空気の流れ、温度・湿度・気流といった環境要素を統合的に制御する「熱を操る空調」の実現を目指しています。
この取り組みにより、設備機器の効率向上(創る技術)と省エネルギー(使う技術)を両立させ、快適性と環境性能の両面で高い価値を提供します。
空調計画の概要
- スマートビル化によって進化する空調システム
ビルをスマートフォンに見立ててデータ管理層とアプリケーション層を分離、常に最新状態を保持
- BIMによる建築設備のメタ情報をビル管理システムで活用
3次元情報だけでなく、機器表情報、機器の納入仕様、配管接続情報、計測ネーミングコード、各種パラメータ、初期性能検証データなど、ビル設備に関連するあらゆる情報をスマートビルシステムにデジタルツインとして集約して熱を操ります
- 縦型蓄熱槽の有効活用
実揚程のない縦型蓄熱槽を活用し、自然エネルギー(太陽熱・地中熱)のエネルギーロスを最小化する蓄熱制御を実現(AIによる空調負荷予測で1週間分の運転計画立案,地中熱の年間活用 他)
- 空間の立体的利用
立体的な環境場を利用して室内上下温度分布と気流を制御し、多様なワークプレイスを創出
- 湿度制御
デシカント空調機とウエットエアー空調機により快適な湿度環境を実現
- 自然換気の最適化
風の力を利用したバランス式自然換気窓により、外気の取り入れを効率的に管理(自動許可禁止)
- 外気冷房の活用
外調機によって外気を冷房に活用し、省エネルギーを促進
- 放射環境の快適化
床・壁TABS(放射冷暖房)によって、均一で快適な温熱環境を提供
- 個別制御による快適性向上
スマートビル化により、床吹出ファンの個別制御やSET*連動のシーリングファン制御が可能に
- 照度と光環境の調整
ハイサイドライトと自動ロールスクリーンによって自然光を取り入れ、明るさと省エネを両立
- 照明による生体リズム調整
照明の色温度制御により、サーカディアンリズムへの配慮を実現
- クラウドによる空調設定
現地中央監視サーバを不要とし、在室者がブラウザから空調設定を操作可能
- IoTによる満足度向上
在室者情報の集約・分析により、個々の快適性に応じた空調制御を実現
このように、当社の「熱を操る空調」は、技術の融合によって快適性・省エネ・スマート化を高次元で両立させる新しい空調のかたちです。
施工パーク構想
本センターでは、施工技術を「現地・現物」で体験できるフィールドを構築し、「施工パーク」として整備しました。施工のプロセスや工夫を可視化することで、技術理解の促進と教育効果の向上を目指しています。
具体的には、各施工箇所に二次元バーコードを設置し、モバイル端末で読み取ることで施工のポイントやコンセプトを表示できる仕組みを導入しています。また、通常は天井内に隠れている機器・配管・ダクトなどをあえて露出させる「天井レス」構造とし、施工方法の確認が可能です。さらに、ダクト系統ごとに色分けすることで、空気の流れを視覚的に理解できるよう工夫しています。
衛生器具と配管の納まりや排水の流れについても、透明配管を用いて施工し、点検口から目視できるようにすることで、内部構造の理解を深められる設計としています。加えて、実物の配管を用いて目隠し(ルーバー)を構築することで、教育素材と建築デザインの融合も図っています。
この施工パークは、新人教育、OJT、インターンシップ、施工前確認など、技術教育の場として幅広く活用する予定です。
施工パークにおける施工技術の体験
クリーンルームでの製品改良と開発
本センターでは、ISOクラス5(0.5μm,クラス100)準拠のクリーンルームを新設しました。
近年、AIや生成AI、自動運転、遠隔医療、協働ロボット、スマート化、IoTなどの技術が急速に進化しており、これらの発展には高速通信インフラの整備と、それを支える半導体技術の進化が不可欠です。
エアトロニック事業部は、東熱の製造部門として、半導体パッケージ基板の製造工程において、非接触ドライクリーナー(エアーによる異物除塵装置)の改良を重ね、数多くの装置を製作販売してまいりました。これにより、基板生産ラインの歩留まり向上に貢献し、技術革新と社会的価値の両立を実現しています。
今後も、さらなるテクノロジーの進化に対応すべく、新設されたクリーンルームを活用し、空気や水を利用した製品の開発・改良・販売を通じて、社会への貢献を続けてまいります。
新設したクリーンルーム(ISOクラス5)
施設紹介
プロジェクト概要
敷地概要
建物概要
再生可能エネルギー設備
本センターに導入した再生可能エネルギー設備(太陽集熱・地中熱)については、東京都 令和6年度「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」の助成を受けております。
導入設備の概要
アクセス
住所
〒124-0013 東京都葛飾区東立石2-4-5
最寄駅
京成押上線
- 京成立石駅(徒歩11分 800m)
- 四ツ木駅 (徒歩13分 900m)
JR総武線
- 新小岩駅 ①番乗り場 [京成バス東京]新小51(綾瀬駅行)⇒忍橋下車
新小岩駅 ⇒ ①バス乗り場(徒歩2分)
新小岩駅 ⇒ 忍橋(乗車12分)
忍橋バス停 ⇒ 東熱技術開発センター(徒歩1分)