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2012年11月

高効率省エネ型データセンタモジュールを開発

高効率省エネ型データセンタモジュールを開発
ファンレスの外気冷却により従来比約60%の空調エネルギー削減を実現

 当社は、日本電気株式会社、NECフィールディング株式会社、NSK株式会社と共同で、ICT機器から排除される高温空気とサーバ室内に取り入れる空気との温度差を利用した自然換気によって、空調エネルギーの大幅削減が可能な「高効率省エネ型データセンタモジュール」を開発しました。本モジュールを利用することで、従来のデータセンタの運用形態に対し、年間で約60%の大幅な空調エネルギー削減(データセンタ全体では約20~30%のエネルギー削減)が可能となり、さらなるデータセンタの省エネが期待できます。
本データセンタモジュールは、独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの採択テーマである「ULPユビキタスセンサのITシステム電力 最適化制御への応用」(研究代表者:産業技術総合研究所 前田龍太郎)のシステム実験グループとして取り組んだ共同研究の成果です(注1)。ICT機器製造(NEC)、空調エンジニアリング(東洋熱工業)、コンテナ型データセンタの製造販売(NECフィールディング、NSK)などのそれぞれの立場から、サーバの動作情報や運用形態、サーバ室内の空気の流れや温度分布の変動メカニズムを明らかにすることで、ICT機器側と空調側の双方の特性や要求を融合したデータセンタモジュールの開発が可能となりました。
背景

 データセンタでは大量のエネルギーが消費されており、さまざまな省エネルギーの取り組みが進められてきました。しかしながら、今後のデータセンタの需要拡大や、今般の厳しい電力事情を鑑みると、さらなるデータセンタの省電力化が必要とされています。
 データセンタでは、ICT機器だけでなく、ICT機器からの発熱を処理するための空調にも多くのエネルギーが消費されています。すなわち、データセンタで空調に多くのエネルギーを使用する場合、エネルギー利用効率の評価指標であるPUE(注2)が大きくなります。
 空調機を使用して熱を処理する場合、空調設定温度を上げるだけでも省エネルギーが可能になります。ICT機器の開発動向もこの方向に沿ったものとなっており、動作保証範囲を広げた機器の提供も始まっています。
 また、多くのデータセンタで参照されているASHRAE(注3)のデータセンタの推奨温湿度範囲も、徐々に緩和されています。積極的に空調のエネルギーを削減するために、外気を直接取り込む空調方式が選択されることも増えてきています。
開発したデータセンタモジュールの概要

 開発したデータセンタモジュールは、通常のコンテナ型データセンタで利用する輸送用コンテナを組み合わせて利用できるサイズとしました。モジュール内に1列に並べたラックの吸気側のモジュール側面下部に外気を取り入れる外気流入口、外気流入口と反対側のモジュール側面上部にラックからの排気の流出口を設けています。流入口から取入れた外気とサーバの排熱を駆動力として利用し、さらにモジュール内での煙突効果を高めるよう排熱促進機構を設置することで、換気用のファンを用いない自然換気システムを構成し、サーバ室内の冷却・排熱を可能としています。奥行きが6.0mのモジュールでは、1ラックあたり8kWまでのラックを6ラック設置することができます。
 自然換気システムにおける外気利用の可能性を評価するため、日本各地の年間の気象データを用いて、ASHRAEの推奨温湿度範囲を満たせるかどうかを評価しました(注4)。現在の多くのデータセンタで用いられているASHRAEの推奨温湿度範囲(2004年版)を適用すると、日本のほとんどの地域で外気を利用可能な期間はわずかです。しかし、改定されたASHRAEの推奨温湿度範囲(2011年版 Class A1)を適用すると、東京で年間の26%、札幌で年間の14%の期間で外気を利用できるようになります。
 さらに、寒冷期に換気取り込み量を調整することにより、外気を利用可能な期間を東京で65%、札幌で62%まで拡大させることが期待できます。年間の空調エネルギーを試算したところ、換気用のファンを用いない自然換気システムを用いて換気取り込み量を調節する場合、従来のASHRAE(2004年版)の推奨温湿度範囲を満たすように空調システムを用いる場合に比べ、東京で約64%のエネルギー削減が可能になることがわかりました。
 これに加え、換気用のファンを用いる機械換気を組み合わせることで、東京で70%、札幌で68%の期間で外気利用が可能になり、空調エネルギーをさらに削減することができます。
今後の展開

 建物条件や地域性を考慮したデータセンタの設計や、データセンタを運用されるお客様のニーズや運用形態に応じたシステムを早期に提供できるよう、引き続きICT機器と空調システムとの連携による省電力化に取り組むとともに、自然エネルギーを最大限に活用する自然換気と機械換気・空調を組み合わせたハイブリッドシステムを2013年度内の完成を目指して開発しています。また、コンテナ型データセンタだけではなく、大規模なデータセンタへの適用も視野に入れ、事業化に向けた開発を進めます。

(注1)
研究領域「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」(研究総括:南谷 崇 キヤノン株式会社 顧問)の平成19年度採択テーマ
参考URL:http://www.ulp.jst.go.jp/

(注2)
PUE(Power Usage Effectiveness)
(データセンタ全体の消費電力)/(IT機器の消費電力)で計算される。
PUEが1に近いほど空調や電源などのファシリティの効率がよいことを示す。

(注3)
American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers
アメリカ暖房冷凍空調学会

(注4)
気象庁(http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php)の2011年の気象データを使用した。日本全国を15地域に分け、各地域で1時間ごとの温度・湿度データを用い、外気が自然換気システムに入ってきた場合に、IT機器の吸気側で温度・湿度が推奨範囲に入っている時間の割合を計算した。

<本件に関するお客様からのお問い合わせ先>
技術統轄本部 エネルギーソリューション部 柳原
電話:03-5641-5072
電子メール:syanagihara@tonets.co.jp

 データセンタモジュールの構造
             

 年間における自然換気の適用可能時間

     

 2004ASHRAE Thermal Guidelineを適用

 (温度:2025℃、湿度:4055%

2011ASHRAE Thermal GuidelineClass A1

適用し、寒冷期の換気取込み量を調整した場合

(温度:1532℃、湿度:2080%







年間における空調エネルギーの消費量の比較(東京、札幌)  

            

                                                   
     

   




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